様似町 Oさん
様似町のハウスリース制度を活かし、いちごの安定生産をめざす
故郷にUターンし、新規参入したOさんをご紹介します
[Oさん(31歳)、平成26年1月就農、様似町]
(取材:平成29年6月22日TC記、協力:様似町)
地域の概要
様似町名の由来はアイヌ語の「サンマウニ」(朽ち木のある所の意)から出たものと言われている。
2008年、アポイ岳のかんらん岩や高山植物など学術的に貴重な自然が評価され、「アポイ岳ジオパーク」として、日本ジオパークに認定され、2015年には世界ジオパークの認定を受け、「ユネスコ世界ジオパーク」加盟を果たした。
地域の気候・主産業
穏やかな海洋性の気候と豊かな大地が広がるなかで、水産業・農畜産業が主産業であり、夏の最高気温が30度を超えることがなく、冬の最低気温もマイナス15度を下回ることがほとんどなく、「夏は涼しく冬は暖かい」という気象条件を活かし“夏秋どりいちご”の栽培が近年盛んになってきている。
町が建設して設備が整ったハウスの中では鮮やかに色づいた「すずあかね」という品種が、6月から11月まで収穫され、高収益作物として注目を浴びている。
動機から就農まで
道内の大きな町の設備会社で働いていたOさんに、様似町に住む両親から一本の電話が入る。様似町で取り組みが始まるいちごハウスのリース事業の事だった。
自分でも興味があったので、早速役場に出向き浦河町にあるJAの子会社「(有)グリーンサポートひだか東」の研修施設を見学した。
新しい事業にチャレンジするに当たり、それが地元である事と初期投資が少ない事は魅力だと判断する。「やってみよう」その決心は早かった。
平成24年4月から25年12月まで、「(有)グリーンサポートひだか東」で研修を行う。
平成26年1月就農。100坪の各種設備が整ったハウス3棟が自分の職場になった。
経営概要
経営面積:0.3ha(借地)
施設:100坪ハウス3棟(リース代 37万円/年間)
栽培に必要な防除機、ポンプ、給液機は浦河グリーンサポートから借用している。
労働力は、収穫時に家族1名、パート2名を時給800円で雇用する。
収穫期には、果実の温度が上がる前の朝4:30から収穫を開始し、日中の熱い時間帯は避ける。9月以降の安定出荷のため、摘果、摘葉などの作業が夕方まで続く事もある。
労働力の確保が難しいので、いちごハウス団地で同様に就農した仲間と、パートさんや労働力の貸し借りをしながら賄っている。
収穫後粗選し、高い品質を維持するために共同選果場へ(様似町のいちごの共選施設は29年9月から稼働予定)。
販売は、JAから業務用いちごとして出荷されている。
就農支援制度の活用
リースによる就農時:
新規就農者用ビニールハウス貸付事業(町がリース)
農業次世代人材投資資金(経営開始型)*平成29年から名称変更
いちご苗購入経費の助成(1/2以内 上限なし)
経営の目標
いちごハウスのリースによる就農から、自分で土地を用意しハウスを建てる形の就農をめざしている。平成29年に計画し、30年には着工する予定である。
今は3棟のハウスだが、いずれは4~5棟にすることを経営目標にし、それに合わせて販売額も現状の125%に伸ばす事をめざしている。
*様似町には独立就農時の支援として、
・農地の確保
・施設設備に係る支援(1棟50坪以上で経営規模1,000坪以内の場合、施設整備費の3/4を町・JAが助成)
・作業機や土地の取得費、基盤整備に要する経費を助成(整備に要する経費の1/2以内、限度額300万円)等が用意されている。
就農前に習得した方が良いと思う事・後輩へのアドバイス
みんなが苦労しているパートの確保。
農業簿記の記帳は必須なので、事前に身につけておく。
技術を磨くうえでも、仲間とのコミュニケーションは大事。
一人では限界がある。
やり方は、人それぞれが微妙に違うので、自分に合ったやり方を見つける。
就農した感想
会社員でいた頃と違い、自分のペースで仕事ができる事等もあり、精神的に楽になった。いちご栽培や経営は、自分に合っていたと思う。
いちごハウス団地内には51棟のハウスが並び10戸の就農者がいるが、みな仲間意識が強く技術や作業面で助け合い支え合いながら、品質の良いいちごの栽培をめざしてきた。
ハウス栽培の作業管理マニュアルはあるが、天候により微調整のコツがある。正解はないだけに、みんなの意見を聞くなどの情報交換や、様似町野菜振興会が開催する研修会等の大切さを痛感している。
~仲間と培ったものがあったからこそ、Oさんは故郷で次の一手を打つことになる~