頑張ってます!新規就農者

津別町

津別町 Kさん

たまたまの酪農との出会いが、今や地域のリーダー
新規就農者ならではの柔軟な発想のKさんに学びました!

[Kさん(47才)、平成15年4月就農、津別町]
(取材:平成29年10月OK記、協力:津別町)

地域の概要

 津別町は、道東オホーツク圏の内陸部に位置し、東西37.2km、南北34.1km、総面積約716.80k㎡に及び全道屈指の広汎な町域を有しています。地形は、扇状に広がる河川流域の平地と、山地によって形成され、町面積の86%は森林が占めています。
 夏の気温は高く、冬は流氷などの影響も受け寒冷で、寒暖差が大きいのが特徴。降水量は少なく、晴天日数が多いため日照率は全国有数を誇っています。
 農業の経営形態は、小麦、馬鈴薯(ばれいしょ)、甜菜(てんさい)等の耐冷畑作物と酪農・畜産が主体で林業と並ぶ基幹産業として発展しました。
 新規就農者を受け入れるため「津別町農業新規参入者受入協議会」を農家と関係機関で組織し、農業体験や短期・長期研修の実施、就農準備への支援(経営技術指導、住宅斡旋他)など手厚くサポートしています。

動機から就農まで

 Kさんは静岡県の出身で、横浜の会社でコンピュータ・ハードウェアの保守業務をしていました。この仕事は平成7年に辞め、色々な職を転々としているときにアルバイト情報誌を見て、訓子府町で酪農実習生を募集していることを知りました。酪農をやりたい訳ではなく、たまたま酪農でした。早速申込み、平成9年4月~平成10年3月の1年契約で、つなぎ牛舎で放牧していた酪農家で実習。初めての仕事で戸惑いもありましたが、横浜の会社で先輩から叱られながらも仕事の大切さを教わったのが活き、途中で投げ出さないことを目標に1年間責任を持ってやり遂げました。いつしか筋肉痛も無くなり仕事にも慣れ、他の農場で同じように実習していた仲間とレクレーションなど催しを通して知り合う機会が増えました。そんな時、秋田県出身で専門学校を卒業後に訓子府町の他農場で体験実習していた奥さんと知り合い平成11年に結婚。
 訓子府町の実習を終えるのを知った置戸町の酪農家から「次はうちに来てくれないか」と誘いがあり、平成10年4月~平成12年3月の2年間契約で、フリーストール牛舎の農場で従業員として勤務。またまた、訓子府町の酪農家から「うちに来てほしい」と誘われ、平成12年4月~平成14年3月の2年間、同じくフリーストール牛舎の農場で従業員。「人と付き合ってちゃんとやっていれば、自然と声がかかる。続けることが大切。」と言う。
 Kさん夫妻は酪農実習や従業員として働いているうちに、この経験を活かして「自分で酪農経営がやりたい」と思うようになりました。平成13年に訓子府町の酪農場で勤務していた時に、津別町で新規就農者を募集している話を聞き、就農研修を開始することが出来ました。研修期間は、今までの酪農経験を考慮して1年間でした。
 当時、津別町農協の出資による有限会社「だいち」が経営継承事業を担っており、居抜きの離農農場に新規就農希望者を「だいち」の職員として受け入れ、一定期間の研修後、農場を譲渡するシステムを作っていました。(現在「だいち」は、コントラクターやTMRセンターなど酪農作業の外部化を担っています。)
 Kさんは、このシステムに乗って、1年間夫婦だけで農場運営したことによって、平成15年4月からスムーズに新規就農することができました。とは言っても、経営してみると数年間は要領が悪く、無駄に忙しかったのですが、津別町の人たちに助けてもらい、今は要領よく作業しています。就農して10年目の平成25年には住宅を新築し、子宝にも恵まれ、生活重視の酪農経営を展開しています。
 たまたま目にしたアルバイト情報誌から酪農に携わり、自己資金50万円で独立就農し今に至ったのは、Kさんの途中で投げ出さない強い信念があったからこそ。現在は、「津別町農業新規参入者受入協議会」の副会長として新規就農支援に力を注ぎ、乳質でも町の最優秀賞に輝き、地域農業のリーダーとして活躍しています。

経営規模

・労働力は、本人、妻、短期の従業員1人
・飼養頭数は、経産牛58頭、育成牛41頭
・経営面積は、65ha(飼料用とうもろこし13ha、採草地32ha、放牧地15ha、山林5ha)
・施設は、フリーストール牛舎、育成牛舎(2棟)、堆肥舎
・機械は、トラクター3台(100ps、90ps、80ps)、タイヤショベル

経営目標

・作業時間を生活に合わせ、夜遅くまで働かない。
・時間にゆとりを持ち、家族を犠牲にしない。

経営の特徴

・生活重視のための柔軟な作業時間配分
(飼養管理時間は、午前5~8時と午後3~6時の基本6時間で、この間にパーラーで搾乳し、フリーストール牛舎でTMR給与。)
・フリーストール・パーラー飼養と放牧の組合せ
(省力化のために昼夜放牧し、冬期間はパドックで運動。)
・収穫作業の外部委託
(飼料用とうもろこしや牧草収穫はコントラクター利用により省力化と作業機所有軽減。)

就農支援制度の活用

・青年等就農資金
・津別町事業(経営自立補助金)

後輩へのアドバイス

・一生懸命コツコツやっていれば、必ずチャンスが来ます。この期を逃がさず心の準備を。
・地域の方々との付き合いを大切に。畑作と酪農は作業時間が違うが、会合や冠婚葬祭は大事にしないといけない。
・個性的な経営をやりたいというのは良いが、周囲の農場から孤立してしまうやり方は考えた方がよい。
・就農して分からなかったのは経営簿記や税金関係だったので、事前に勉強を。
・生活面は、子供の通学バスや医療無償化など暮らしやすいので安心を。