頑張ってます!新規就農者

厚真町

厚真町 Aさん

やる気、健康な身体、柔軟な考えがあれば、農業はやっていける!

[Aさん(48歳) 平成24年4月就農 厚真町]
(取材:令和元年10月23日TC記  協力:厚真町農業担い手育成センター)

地域の農業

 厚真町では、明治の開拓期から豊かな水資源を利用した水稲栽培が行われてきました。
畑作では、小麦・大豆・馬鈴しょ・てん菜といった北海道特有の作物や、ほうれんそうや花などの施設園芸、肉牛・酪農・豚・鶏・めん羊などの畜産も営まれています。
 「不老長寿の果実」と言われ人気のある特産のハスカップは、「あつまみらい」という新品種が誕生し、約30haと栽培面積日本一を誇ります。

動機から就農まで

 厚真町に住むことが目的だったというAさん。農業には興味がありましたが、就農相談会(新規就農フェア)では、就農に関しての金銭的な話のウエイトが大きく、一度は就農への興味が引いてしまったと言います。しかし「やる気があるなら厚真町へ」という誘いを受けて、飛行場などのアクセスも良く、海・山等の自然環境の良い厚真町への移住を決めました。
 平成21年8月から、地域おこし協力隊として着任しましたが、お子さんも幼く周囲からは「できるわけがない」とも言われ、就農に賛成する人は少なかったと、当時を振り返ります。しかし、地元農家での研修などを通じていろいろな人との話し合いや、地域活動に参加する内に「これで生計を立てることができる」という気持ちが固まり、Aさんの「町内で生活するために何でもする」という当初の想いが、施設野菜で就農という形になったのは、地域おこし協力隊の任期を終えた平成24年4月でした。

経営規模

 経営面積(借入地)2㌶に73坪ハウス12棟。ほうれんそうを中心に、オクラ、小松菜などを栽培しています。
農地の確保については、多くの人から情報を収集しました。農業委員さんの紹介で、牧草畑を借りることができました。現在はその半分の面積を使用しています。ハウスも町内の人に譲ってもらいました。
トラクターは2台。住宅の一室に、出荷調整を行う選果場を設置しています。

経営の特徴

 1週間にハウス1棟のサイクルで播種し、順次収穫をしていきますが、天候の影響で生育が追いつき2棟、3棟と各々の作業に追われる事もあるといいます。12棟のハウスを年間4回転させて栽培しており、経営全体の95%はほうれんそうという「ほうれんそう専業農家」です。
 販売ルートは、昨年はJAに出荷していましたが、今年から全量をスーパーに出荷しています。

就農支援制度の活用

 厚真町独自の支援で担い手育成夢資金(JAから借入れ)
 農業次世代人材投資資金(経営開始型)
 Aさん曰く、特に経営が安定する迄の、「経営開始型」があったおかげで農業に集中する事ができたし、また厚真町の全面バックアップがありました。

経営の目標

 ほうれんそうの生育条件を考え、夏はハウスの妻面を外した状態の雨よけ栽培を実施しています。ほうれんそうは夏場の販売単価は高いのですが、病気も出るようになってきたため、今後何年かをかけて、どのような対策を取っていくのかを検討をしています。  
フザリウム菌に効く緑肥(カラシ系)の導入や、ハウス4棟を増設し既存のハウスを休ませる事等の連作障害対策を考えています。
 今後の方向性としては、規模は現状を維持し、働き過ぎを少し解消するようにしたいと言います。12月のクリスマス近くまで出荷が続く為、冬期間は鋭気を養う贅沢な時間であり、次年度の経営構想を考える貴重な時間として充てています。

後輩へのアドバイス

 農業と言っても特別な事はありません。何の仕事でも同じ、一生懸命にやれば大変だし、適当にやればそれなりです。やる気、健康な身体、柔軟な考えがあればやっていけるのでは?とAさん。
 新規就農して良かった事を、パートナーのEさんに伺うと、「夫婦が一緒にできること。どんな風にしてお金を稼ぐのかが自分もわかるし、大変さもわかる。それが良い」と、収穫の手を休めて答えて下さいました。

雑感①

 就農後に苦労したことは、自然災害の被害を受けてから復旧するまで、精神的に落ち込み肉体的な疲労があった事と聞きました。しかし、就農時は幼かった2人のお子さん達が、災害で曲がってしまったハウスのパイプを直して手伝ってくれたと言います。
いつも家族と顔を合わせていられるところが農業の良さと、言い切るAさんご家族の団結力を垣間見ることができるエピソードです。
 就農から6年間は、10㎞ほど離れた住宅に住んでいたそうですが、平成30年にほうれんそうのハウスが建つ現在地に住宅を新築しました。「農業は仕事の一つで周囲の人が言うほど特別なことではない。植物と話すのでストレスもない」というAさんご夫妻が育てたほうれんそうをスーパーで見かけたら、是非ご賞味下さい。
(写真提供は厚真町)