アメリカ

酪農 男性

<アメリカ農業研修報告書>

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搾乳牛舎外観

はじめに

まず始めに、私は大学生でもなければ、農家の後継者でもありません。大学卒業後、社会人として7年働いてからこのプログラムに参加し、現地で30歳を迎えました。事実、当初私がこのプログラムの募集要項に当てはまっていた条件はほとんどありませんでした。このレポートをどのような方々が見るのかは私には分かりませんが、同じような境遇で迷ったり、諦めたりしている人達に向けて、この経験を書き残したいと思います。

1)派遣期間

2019年10月1日~2020年9月30日

2)配属農場について

私はアメリカ中西部アイオワ州にあるCinnamon Ridge Farmsで研修させて頂きました。牧場のメインは搾乳部門で、搾乳ロボット4台を備えた牛舎で約220頭のジャージー種を飼養しています。その他にも肉牛、豚、鶏を飼養していますが、研修生は主に牛舎・畑での仕事となります。さらに、チーズの製造・販売、ツアーや観光客、小学生の社会科見学など、幅広くビジネスを展開しています。外国人研修生の受け入れにも慣れており、敷地内に研修生用の住宅があり、食事はホストの家で提供してくれました。研修生は常時2~4人程受け入れており、私が研修していた間はブラジル人研修生達と一緒に暮らしていました。2020年はコロナの影響により観光客の受け入れはストップしてしまいましたが、年々観光客も増加傾向で、さらに2019年シーズンにはジャージー種の牧場として年間平均乳量が全米No.1になる等、アメリカの中でも有数の牧場です。

この牧場を管理するオーナー、Johnは、この牧場を作り上げただけあって、酪農家というよりビジネスマン色が強いです。最初の頃、そんなJohnの発言で印象に残ったのが、「観光したければ観光ビザで来ればいい。勉強したければ学生ビザで来ればいい。まずは働いてもらわないと。」という言葉です。私はこれを聞いて全くその通りだと思いました。単純労働が無い酪農場なんて存在しませんし、労働が伴わない研修など有り得ません。まずは働き、与えられた仕事に真摯に向き合わないと、その先を望む事なんてできないと思います。この発言からも多少ビジネスライクには感じますが、信用を勝ち取ってからの融通や働きやすさ、学べる事の多さは多角化牧場のメリットでもあると感じました。

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3)研修の具体的内容

研修生のメインとなる仕事は、子牛・育成・搾乳牛舎のベッドメイキング、除糞、搾乳ロボットのメンテナンス、飼料庫の清掃、堆肥撒き等です。搾乳が必要ないため、空いた時間はJohnがその他色々な仕事を与えてくれます。私の場合は最初の半年は上記の仕事をしていましたが、後半はチーズルームで働いていた従業員が辞めてしまったこともあり、チーズのカットや計量、包装の仕事もしました。労働時間は平均で1日8時間程度、休みは週1回でした。研修生によっては朝晩の子牛の哺乳を手伝ったり、ツアー客対応、畑仕事を手伝ったり多種多様でした。仕事は一人で作業する事が多く、Johnの指示を聞いて実行するのみだったので、言葉に関しても仕事で困るような事はほとんどありませんでした。そして何より、毎日研修生達と一緒に暮らすので、会話を上達させたければいくらでもチャンスはありますし、ホストとご飯を一緒に食べながら話す機会もありますし、牧場には肉体労働以外にも関わっている人達がたくさんいます。仕事以外で語学力を向上させる機会は間違いなく他の牧場よりたくさんあると思います。

そして語学力の向上と共に信用が得られるようになってくると、Johnはより多様な仕事を任せてくれますし、自分のやりたい事や興味のある事に通ずる機会をくれるようになります。私の場合はエサ作りや栄養学に興味があったので、最後の3ヶ月の間にTMRミキサーを運転させてもらいエサ作りをやらせてもらったり、牧場に出入りしている牛の栄養士さんや獣医さんの仕事を見せてもらったり、質問させて頂く機会を頂きました。最後にはコロナで難しい状況の中、他牧場を視察する機会も作ってもらう事ができました。

4)研修の成果

異文化体験という研修の側面では、コロナの影響により多くのイベントがキャンセルになったり、店や施設も休業で訪問できなかったり、さほどできていないかも知れませんが、ホストはそんな中でもピクニックやレストランへ連れて行ってくれて、貴重な体験をさせてくれました。そして外出自粛期間は、自分で勉強する時間や、牧場を出入りする人達、研修生や従業員の仲間と過ごす時間をより増やしてくれたとも思っています。

自分としてもこの歳で色々投げ捨ててまでこの研修を選んだ覚悟と目的はもちろんありましたし、それを達したとは思いますが、そうであってもこの人達に出逢えた事以上の成果はないと思います。違う文化を持つ国で、この限られた時間と限られた語学力の中でも自分を表現し、相手を理解し、絆を築く事ができたという成果は、一生の財産として残ると思います。

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牧場風景

5)後輩へのアドバイス

海外で暮らすというだけで、日本で生活するよりも自分のハードルは下がりますし、限られた中での生活になるので充実を感じやすくなるのは確かです。全てが目新しい事になりますし、新鮮な日々を送れると思います。しかし、それが日本に帰って来た後に果たして有意義だったと言えるのか、私には疑問でした。さらに今の時代、海外にいても簡単に連絡が取れて、簡単に日本の情報をチェックできます。SNSを使っている間はどこにいても関係ないのです。それでもこの研修にチャレンジする意味は何なのか、行く前に良く考えて欲しいと思います。行く目的、行ってからの目標、そして帰国後のビジョンまで持っておく事がこの研修の最も大切な部分だと思います。

6)その他

ホストは日本からの研修生ならいつでもウェルカムだとおっしゃっていました。もしこの牧場に興味を持った方、もっと詳しい情報を知りたい方がいらっしゃいましたらご連絡下さい。

おわりに

この経験が貴重であった事は間違いないですが、この経験が私にとって良かったかどうかは今後の人生で証明していきたいと思っています。経験は共有してこそ価値を持ち、駆使してこそ真価であると考えます。そしてなにより、この研修を通して出逢った人達、お世話になった人達、そしてこのレポートを読んだ人達に顔向けできるような人生を歩んでいきたいと思います。

最後になりますが、この研修をするにあたってご尽力頂きました多くの方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。