海外派遣事業 研修生レポート

アメリカ

農業 男性

<アメリカの農業研修で、自分を見つめ直す。>

 2004年春・・・北海道農業大学校を卒業後、アメリカへの農業研修の話が決まった。5月20日に日本を離れ、ミネソタ州(ミネアポリス)で2週間の英語研修、またオリエンテーションを経て農場へ派遣された。農場はアメリカの協会の方で要望を通して選定して頂き、私のアメリカ生活が出発した。

  私がたどり着いたのは、アメリカ東部・ニューイングランド地方。アメリカでもっとも面積の小さい、そして海に囲まれた自然美しいロードアイランド州だった。私が滞在したのは、ここショートナーファームだった。ここは約80haの面積を所有し、種類多くの野菜類の生産・ハウスにおける花の栽培・ストロベリーやブルーベリー畑を管理している。また自家に店や花屋を他に4店舗所有し、ファームで生産された野菜・花が店頭に並べられる。

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 私はここで他国からの研修生と丸1年の月日を過ごした。ハンガリー・ブルガリア・ブラジルなど、約10人と・・・、時には性格や文化の違いで気に入らない所もあったけど、同じファームで過ごす者だけにわかる仲間意識だとか生活の違いから人間性を尊重するようになり、いつの間にかまるで兄弟のような関係になった。
 
 「俺らは国の代表として国と国をつなぐ架け橋なんだよなあ~」と真剣に話したこともあった。馬鹿みたいに飲みまくったり、ふざけあったりしたあのときが今は懐かしくもあり恋しい。でも他国に友達がいる自分は幸せを強く感じている。これからも大切な友達であり続けたい。

 1年のアメリカでの農業生活を振り返ると、店では夏場に畑で採れる野菜がずらりと並んでいた。たとえばレタス、ブロッコリー、にんじん、食用ビート、カブ、ほうれん草、トウモロコシ、イモ、トマトなどまだまだ沢山の作物の生産をしている。またハウスは約50mハウス12本。少しはずれの敷地に5本。例えば春先にはパンジー、チューリップ、ユリなど、それから夏場にかけてはキク、秋からはクリスマス用のポインセティアなど。実にシーズンなく、数え切れない程の種類に圧倒された。

 また、このようなガーデニング用の花だけでなく切花・フラワーアレンジメントでもお客様に提供している。店の周りにも他に庭木も種類多く売られている。店の中も野菜を中心にプレゼント用の小物やベーカリー・古い家具も店に並んでいる。

 国道沿いに位置するこのファームは、いつも多くのお客様でにぎわう。ファームでは多くのイベントが年間通して開催された。6月下旬からイチゴ狩りがはじまり、このシーズンが終わるとすぐブルーベリー狩りがはじまる。

 9月にはフォール・オークションという庭木やガーデニング用資材がオークションにかけられる。この後、10月31日のハロウィンまでの期間、約1ヶ月余り(週末にかけて)パンプキン・エクスプレスが実施された。トレーラーにお客様を乗せトラクターでファームを案内しながら畑に並べられたカボチャまでたどり着くもの。ファームで生産された新ジャガを使ったフライドポテトの販売も行った。

 11月下旬からはクリスマスに向け花はもちろん、クリスマスリースの作成を自ら行い、ファーム産の種類多数の松が使われる。また、クリスマスツリー畑を持ち、お客様が選び、自ら切り倒す。・・・などなどファームではこのようなイベントが沢山ある。そのほかにも祝日に向けた花の栽培には力を入れている。

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 私は毎日を過ごす時の中で、このファームに強い魅力を感じていた。それは私がこちらにやって来た当初から研修を終えるまでいつも感じていた。それはやはりこの様な土地(場所)・気候条件・多くのイベントなどの条件を最大限に生かしたお客様(消費者)とのコミュニケーションだった。お客様とのふれあいをいつも大切にし、そして農産物を提供していく。消費者との壁を作らず、安心・安全の言葉が前面に伝わってきた。今の日本と言うよりこれからの日本の課題に直面したように感じた。また、これが我々次世代を担う者の任務にも聞こえてくる・・・。

 1年と言う時間の中で、私はすべてのファームでの仕事に従事させてもらった。振り返ると、本当に中身のいっぱい詰まった生活を過ごせる事が出来た。すべてが初めてで、すべてがとても新鮮に思えた。一人の自分と周りの温かい人たち・・・。ほんの少しの事ではあるけれど、行動一つにしても、考え方一つにしても、何か新しい自分に出会えた様な気がする。

 実は私がアメリカ行きを希望した理由は、もちろん農業研修、そして自分自身をもう一度見直せるチャンスだと思ったからだった。もう一度、自分の輝いている姿に出会いたいと強く思ったからだ。何も知らない世界に飛び込むのは簡単なことではけしてなかった。しかしそこで過ごした時間は、何にも変えられなく、ただ自分の中にだけはっきりと刻み込まれている。今本当にいけてよかったと思うし、本当に自分は幸せに感じる。その背景に存在する両親には感謝の気持ちが尽きない。

 いつの日か、私が1年生活したアメリカのショートナーファームに両親を連れて行ってあげたい。これからそんな両親と今野家の農業にいっそう力を入れると共に、今野家5代目としてこれからの農業をしっかり見つめていきたい。

~これからの研修を希望する後輩へ一言~
 あんまり上手く表現は出来ないけれど、海外研修を通して自分自身を成長させられると思う。今まで気ままに生活していた奴・自分自身をしっかり持っていた奴・色んな奴がいるけれど、海外生活していく中で日本人の感覚とまた違った沢山の人と出会う事だろう。考え方・見かた1つにしても違った面に触れることと思う。今までの自分とこれから感じる自分の姿みたいなものを感じる時、自分のことを見直すことが出来るだろうし、新しい自分を発見するだろう・・・。海外ではしっかり自分を持って欲しいし、しっかり自分を表現してもらいたい。それが1番大切だとはっきり言える。

 農業についての知識を持っているのにこしたことはない。何もかにも違う環境の中で、新しい発見に驚きを感じることもあるだろうが、すべてが勉強だし、挑戦ということを忘れないでほしい。