デンマーク

酪農 男性

<怒涛の1年デンマーク酪農研修>

  高校・短大在学中から抱いていたデンマーク酪農研修。短大卒業後デンマークへ1年間行くことが決まり、長年抱いていた夢が実現するのかと期待に胸躍る気持ちでしたが、出発の日が近づくにつれてその気持ちは不安へと変わっていきました。この時私は、この先デンマーク研修で待ち受ける様々な困難など夢にも思っていませんでした。

 パスポート・就労ビザ等デンマークへ行くための準備期間に卒業より4ヶ月かかり、とうとう2007年7月10日デンマークへ向かうため千歳に行き、翌日成田よりスカンジナビア航空でコペンハーゲンへ直行のはずが、直行便が飛ばないということになり、ルフトハンザ機でミュンヘンまで行き、乗り換え、コペンハーゲンへ向かわなければ行けないという前途多難な始まりでした。

 デンマークで研修生として受け入れてもらったSimestedgaard農場は、コペンハーゲンより電車に揺られること約4時間、ユトランド半島の北部に位置するオールボーから約35Km離れたバーマーという小さな町でした。私の、この町に対する率直な第一印象は、”THE・田舎”でした。しかし、私が住んでいる町と雰囲気が似ているためか、とても親近感の持てる町でした。

 私は、農場から少し離れた家にもう1人の研修生と共同で住んでいました。家には、居間・キッチン・バスルームのほか3部屋あり2人で生活するには十分な生活環境で、風が強い日には隙間風が吹いたり、アリの大群が発生し退治したアリの死骸が翌日には消えていたという事件等、私には面白い家でした。そこから3Kmほど離れた農場へ通うため与えられた自転車は足がとどかないもので、ある意味、私の体格はデンマークで規格外のようでした。

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 農場には、搾乳ホルスタイン約160頭、肉牛、レッドホルスタイン、羊と飼育しており、フェントトラクター、コンバイン等、様々な機械を所有し、農場から見える畑は、ほとんどがこの農場の所有地と、この町で1番と言って良いほどの大きな農場でした。農場では、農場主、農場主の奥さん、デンマーク人が2人、研修生が働いていました。農場主は、私が帰国する2ヶ月ほど前に息子へと変わり、研修生は契約がきれるたび随時受け入れているようでした。

 1日の仕事の流れとして、AM4:00に起床し農場へ行き搾乳の準備をし、AM4:30より搾乳。搾乳は2人で行い、1列10頭の2列20頭パーラー。搾乳は、約2時間半で終わり、トラクターでの作業、主に給餌や牛床の清掃を行いました。その他、日により発情牛の人工準備を終えAM8:30頃、朝食でした。朝食は、白パン・黒パンにパンに乗せるチーズやハムなどでした。

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 朝食後、農場主から指示された仕事や自主的に仕事を考え仕事をした後PM12:00頃に帰宅し昼食。昼食は研修生と当番制で作っていましたが、物価が高く大変でした。PM3:30より午後の仕事へ行き、肉牛・子牛への給餌、牛床清掃を終えた後、PM4:30より午後の搾乳を行い、パーラー清掃をしてPM6:30頃1日の仕事は終わり、農場主の奥さんが用意してくれた夕食、ほぼ毎日じゃがいもに肉でしたが、これをおいしくいただき帰宅していました。夏には、麦乾、コンパクトの積み上げ、牧草の収穫に至っては、PM1:00からPM9:00頃まで牽引でコンバインと並走するという私にとっては、ハードな作業がありました。

 この様な作業を、しっかりとこなせる様になるまでの道のりは忍耐の日々でした。やはりそこには言葉の壁があり、何をどのようにやれば良いのか、説明されても理解できず戸惑う日々。注意されても何に対してなのかわからずに悩む日々。全て私のコミュニケーション不足が招いた事でした。慣れない環境での生活に耐え約2ヶ月たった頃には、仕事にも慣れ、自分の気持ちも片言の英語やデンマーク語ですが伝えられるようにもなりました。気持ちにもゆとりがもてるようになり週に3日ある休みにはオールボーまで行ったりと楽しむ事も出来るようになりました。

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 私は休日の移動手段としてほとんどバスを利用していました。バスを利用するには、クリップコートと言う回数券の様な物が便利で、尚かつお得でした。私が住んでいた町からバスで約30分程で オールボーへ行く事が出来ました。オールボーは人口約16万人のデンマークでは4番目に大きな都市で、歴史を感じさせる建物が連なり、活気あふれる街でした。またオールボーには、Jomfru Ane Gade と言う繁華街の様な場所があり、夜から朝まで賑わっていました。

 また、オールボーにはデンマーク語を学ぶ学校もあり、私は週に1回この学校に通っていました。学校では殆ど英語は使われておらず、自分の知っているデンマーク語で会話しながら新しい言葉を学んで行く感じでした。学校には様々な国の人がきているので、言葉以外にもたくさんの事が学べ楽しくデンマーク語を覚える事が出来ると思いますが、私は先生と争い挫折しました。

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 約1年間のデンマーク実生活により、文化や言語の違いが時として生活するうえで心の重荷になる事を思い知らされましたが、少しの勇気と時間がそれを解決してくれました。
 研修生活で得た経験や知識をこれから十分に活かして、厳しい酪農の現状の中努力して行きたいと思います。
 最後にデンマーク研修にあたって支えてくれた人たちへ感謝し、その感謝の気持ちを忘れない人でいたいと思います。